RM_horseの競馬コラム

RM_horse別館コラム

RM_horseの競馬コラム(https://rm-horse.hatenablog.com/)の別館です。競馬以外の興味ある話題を書きます。

瀧澤謙太選手の大晦日参戦を素直に応援出来ない理由

 

応援している瀧澤謙太選手のRIZIN3戦目が決定しました。

 

9月27日に金太郎戦、11月21日に扇久保戦と

ショートスパンの2連戦があったにもかかわらず、

前回から1ヶ月の超ショートスパンの大みそかにまた試合をします。

 

相手は佐々木憂流迦選手。

UFCにも参戦経歴のある、正真正銘の強豪です。

 

しかし、この大晦日の参戦を

手放しで応援することは出来ません。

 

瀧澤選手が嫌いになったわけではありません。

この試合をすることは危なく、

選手寿命や、もしかすると選手生命に関わるからです。

当然、MMAですから危なくない試合はないですが、

特に危ないと思っています。

 

なぜ、そういう思考になっているか

詳しく書いていきます。

 

 

4ヶ月で3試合はハイペースすぎる

まず、単純に9月末の金太郎戦以来、大晦日までの間に

3戦も消化することになります。

これはMMAではかなりハイペースです。

 

怪我で長期欠場が多発する競技なので、

年間何試合が平均なのかというデータは取れませんが、

だいたい3,4試合、多くても5試合がスタンダードだと思います。

年間3,4試合なら3ヶ月か4ヶ月に1回のペースですから、

MMAをよく見る方が、自分の好きな選手を思い浮かべると

怪我以外なら3ヶ月に1回くらいは試合を見ているなと

思うのではないでしょうか?

 

もちろん、試合が秒殺だったことで

試合で負ったダメージがないため、

短いスパンで試合をするパターンもあるでしょう。

 

ただし、今回の瀧澤選手のケースは違います。

 

 

・なぜ格闘技は年間3,4試合がスタンダードか

そもそもなぜ格闘技は年間3,4試合になってしまうのか?

私は格闘家ではないので身体の負担を経験したことはありませんが

側から見てもわかることはあります。

 

まず、顔面を含む頭部への打撃は脳へダメージがあることは

医学知識がなくてもわかることです。

打撃を貰って意識が飛ぶのは、脳震盪によるものですので

当然何の問題もないわけはありません。

 

最終的な後遺症としてよく知られているのは、

いわゆるパンチドランカーです。

Wikipedia; 慢性外傷性脳症

まだ研究段階のようですが、ここまでいくともう手遅れ感があります。

全員がそうなってしまったわけではないですが、

格闘技をする以上、シビアな判断が必要です。

 

そして、MMAを長い間見てきて実感するのは

皆だんだん打たれ弱くなってくること。

怪我や病気で打たれ弱くなる前に引退することもありますが

そうでない場合は、晩年にほぼ全員打たれ弱くなっています。

 

打たれ弱くなったと実感した時、すぐに引退するのは難しいです。

身体はまだまだ動くし、技術は向上しているのが実感できているのに

なかなか辞められないでしょう。

 

厄介なのは脳というのはダメージを教えてくれないことです。

例えば骨折していたり、靭帯を損傷していたら

患部に痛みがあるのですぐにダメージがわかります。

しかし、脳はダメージがあっても痛みがありません。

詳しく書いてあるブログがあったので引用させていただきます。

『しかし、脳がダメージを受けると、脳はそれを察することができません。脳という器官は、「今、僕の脳がダメージ受けています」とは決して言わないんですね。

よく試合でKOされた直後に「大丈夫、大丈夫」と倒された本人が言っているシーンをよく見かけますが、あれはダメージを受けた脳による判断ですから、本当に大丈夫かどうかは疑ってかからなければなりません。

(中略)

 また、脳には、痛みを感じないという特徴があることも覚えておかねばなりません。脳には他の組織に分布している痛覚がないんです。

(中略)

ですから、脳がガーンと思いっ切り揺れたとしても、痛みとして感じられることは少ないんですね。しかも頭蓋骨に包まれていますから、内部の出血や腫れも外から察することができず、非常にわかりにくい、見えにくい。膝なんかだと、蹴られてダメージを受ければ腫れたり、赤くなったり、動きが悪くなったり、痛かったりと、サインが出てきますのでわかるのですが、脳の場合は、脳の細胞が多少痛んでたり、脳の内部で出血があったりしても、外から見えません。

明らかに意識を失っている場合は別として、軽症の場合、ちょっといつもと違う、ちょっと意識が変容してくるというところでしか、見ようがないんですね。』

格闘技と脳のダメージ1 ~脳の特徴~ | Dr.Fの格闘クリニックより。

 

これを自覚している選手、トレーナー、

もっというと興行側の人間がどれだけいるのでしょうか?

案外少ないような気がしています。

 

 

瀧澤選手は前回の試合でノックダウンがある

冒頭で記したように、瀧澤選手は9月27日に金太郎戦、

11月21日に扇久保戦と2試合出ています。

どちらも3R判定で、お互いの打撃が交錯する試合でした。

 

特に前回の扇久保戦の3R序盤に、扇久保選手の左ハイキックで

ノックダウンをしています。

決して効いていないダウンではなく、瀧澤選手も

「一瞬意識が飛んだ」

と話していました。

 

そしてダウン後に一度立つも再びスラム気味に投げられたことも

ダメージにもなったことでしょう。

残り1分を切った時にスタンドになりましたが

フラフラな状態でした。

少なからず脳にダメージがあったことの表れでしょう。

 

KO負けではなかったものの、ノックダウンもKO負けと変わらないくらい

慎重に対応するべきではないかと感じています。

 

吉鷹弘氏のKO負け後の選手に関する見解や、

川尻達也選手のKO負け後の対処法がまとめてあります。

特に吉鷹弘氏の話は重要です。

『KO負けした脳へのダメージは30日そこらでは決して抜けきれるものではなく、CTスキャン等で医者から「問題なし、、、」という判断を出されたとしても、それを信じて試合に参戦することは危険極まりないものである。
何故なら神経系統の細かな損傷等まではわからないことが多く、CTスキャンの検査などで異常なし、、、と判断されても、パンチドランカーとしての症状が観られることがあるのだから、、、。

(中略)

すぐにスパーリングを開始する選手がいるが、脳というものは倒れたことを確実に記憶している為、ある期間(最低1カ月以上)をおかなければ、軽いパンチでも倒れてしまう、脳が倒れることを覚えてしまうのである。

※これは一度、癖になってしまうと未来永劫 取り除くことは難しい、、、、。』

ガイオジムBLOG: 格闘技やボクシングでKO負けをした後の対応と対処の仕方より。 

 

KO負けではないですが、ノックダウンもKOに近いダメージを負ったとするならば、

「30日やそこらで決して抜けきれるものではない」ダメージを抱えながら、

晦日に試合をすることになります。

 

相手は佐々木憂流迦選手。

グラップリングが得意な選手ではありますが、

打撃を全く出さないわけではありません。

いつもはダウンなんてしないような打撃で

倒れてしまうこともあるかもしれません。

そして、そのダウンでまたダメージを負う。

というスパイラルに陥る可能性もあります。

 

とてもじゃないですが

ここから1ヶ月足らずで試合をするのは危険なのは間違いありません。

 

 

試合のオファーを断る勇気

瀧澤選手も上記のことは理解していると思います。

実際、前回の扇久保戦が決まり、試合前の段階では

「よっぽど次の試合が秒殺決着でもない限り、大晦日はまず試合をしない。」

という旨の話をしていました。

 

しかし、扇久保戦で敗れてしまい、

試合後は少しニュアンスが変わってきました。

晦日はオファー次第だとか

負けたので取り返したい気持ちもある

というスタンスになっていました。

 

そして、RIZINからのオファーを受けてしまいます。

理性とファイターの本能では、完全に本能が勝ってしまうようです。

 

瀧澤選手のMMAファイターとしての弱点は、

試合のオファーを全て受けてしまう、断れないことだと思います。

特に瀧澤選手はフリーですから、強制的に止めてくれる人もいません。

 

瀧澤選手が試合を断れないのは、以前にもありました。

2019年の6月にパンクラスで外国人選手との試合が決まっていましたが、

相手が試合前日に欠場。

普通はそのまま試合が中止となるだけですが、

なんと、別選手のセコンドで来日していた

10kgも重い外国人選手との対戦オファーを受けてしまいます。

その後、対戦相手から血液検査の結果が提出されずに

結局試合が中止となって一安心でしたが、

もし実現していたら、選手生命が終わる可能性が高い

危険すぎる試合でした。

 

今回の試合の危険性は、同じか、もしかするとそれ以上だと思います。

試合が出来る時に試合のオファーを断るのは良くないですが、

出来ない時に断る勇気は必要です。

今回は試合が出来ない状態に相当すると思っています。

 

高校野球の投げすぎ問題に通ずるような話だと思います。

実力のある投手が高校野球で投げすぎたために

球団に入団後、怪我との闘いになったり、

球速やコントロールが劣化してしまい、

活躍が出来なかった例はゴマンとあります。

 

格闘家も同じような状態になっていると思います。

 

 

良識に欠けるRIZIN

一番の問題なのは試合のオファーを出すRIZINです。

なぜノックダウンのあった選手に

ショートスパンのオファーを出すのでしょうか?

明らかに選手の健康を軽視しています。

 

選手と興行側は、なかなか難しいですが対等な立場になることが理想です。

興行がないと選手活動は出来ませんが、興行側も選手がいないと成り立ちません。

持ちつ持たれつの関係であるはずなのに、

実際は興行側が大きい顔をしているのが実情です。

 

選手はオファーを聞いたら断れないことを利用して

無茶なオファーをしてくるのです。

選手が危険かも?とか一切考えていません。

 

瀧澤選手は既にRIZINの便利屋の一人になりつつあります。

(一番の便利屋は8月から4連戦の萩原選手)

そうはなってほしくありません。使い捨てされるだけです。

 

 

理想の結末は試合の勝利ではない

今回の試合に関しては、

理想の結末は試合で勝つことではないと考えています。

 

あまり願ってはいけないことですが、

大きな怪我以外の何らかの要因で試合自体が流れることが

理想なのではないかとすら感じています。

それくらいこの試合には反対でした。

 

試合の度に当然減量もあります。

瀧澤選手は水抜きはしていませんが、

それでも5kg程度の減量があり、

計量前日は何も食べれないくらいになります。

 

それを9月末から12月末のたった4ヶ月で

3回も±5kg行ったり来たりしているのです。

それだけで内臓の負担がどうなっているのか?

と感じます。

 

健康診断の問診票記入で、

この1年で体重の増減が2kg(あるいは3kg)あった

というチェックがあるくらい、

体重の増減は健康のバロメーターです。

それを超える5kgも痩せたり戻ったりを

短期間で繰り返しているわけです。

 

そもそも試合をしなくても健康に良くないプロセスは踏んでいます。

 

こんな背景がありながら、

「試合間隔短いけど頑張れ!」

なんて私は言えません。

 

瀧澤選手はファンをものすごく大事にする方です。

こんな無茶な試合間隔でも盲目的に応援していたら、

今後もファンが喜んでくれる、声援に応えようと

同じことを繰り返してしまいますよ。

 

私は瀧澤選手が群雄割拠のMMAの世界で頂点にのしあがるために、

自分が出来ることの最適解を進んでいただきたい。

この試合を受けることは、うまくいった時は最短手順かもしれないですが、

あまりにリスクが高すぎます。

 

格闘家本人からしたら、

「最初から命賭けているんだ、身体が動けば関係ないんだ」

という気持ちなんだと推測しますが

賭けなくていい命は賭けなくていいのです。

出来るだけケアをするべきなのです。

 

私は現役生活が全てではないと思っています。

引退後の方が人生は長いはずなのですから

その日々も充実するべきなのです。

 

そういうことを考えると素直に応援は出来ない。

というのが結論でした。

 

なので、前回あれだけ書いた

試合前の分析は今回はしません。

 

とにかく瀧澤選手の選手生命およびその健康を

大きく脅かすような結末にならないことを願っています。

 

大袈裟かもしれませんが、間違えたことは書いていないと考えています。