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【RIZIN24】瀧澤謙太 vs. 金太郎 感想

 

9/27 RIZIN24の観戦に行ってきました。

MMAは20年来の趣味で、大会自体を観ることが楽しみでしたが

1番の目的は瀧澤謙太選手の応援でした。

 

彼はパンクラスで着実にキャリアを積み、

ベルトを巻いた経験は無いものの、

バンタム級としては驚異のKO率80%を誇り、

RIZIN出場までたどり着きました。

 

今回はなかなか相手が決まりませんでしたが、

試合のなんと6日前に金太郎選手との対戦が決まりました。

 

金太郎選手もパンクラスでキャリアを積んで、

瀧澤選手よりも一足先に今年の2月にRIZINに参戦し、

加藤選手相手に一本勝ちをおさめています。

 

両者は対戦経験はありませんが、

昨年の9月に瀧澤選手がTwitterで金太郎選手への対戦をアピールしました。

その時、金太郎選手はパンクラス暫定王者決定戦ならやりたい

と返答していましたが、対戦は実現しませんでした。

 

そんなパンクラスファンにとって待望のカードが

RIZINで組まれました。

今回はこの試合を全体を通した感想を書かせていただきます。

 

なお、この感想を書くにあたり、

瀧澤選手ご本人およびセコンドの木暮選手に

お聞きした話を参考にしています。

 

そして一切の忖度を無しに書きます。

 

 

・試合の振り返りと感想

まずは試合を振り返り、感想を記します。

試合映像はこちらから↓

YouTubeRIZIN FIGHTING FEDERATION

 

▪️1ラウンド

試合開始後のファーストコンタクトは金太郎選手の強烈な左ミドルキックでした。

少し身体が曲がるような受け身だったので、効いたかな?と思いましたが

その後の動きが鈍ることはありませんでしたので一安心でした。

瀧澤選手は大舞台での気負いも(無意識に)多少あったのか、

パンチが大振り気味に見えました。

対して金太郎選手は着実にカウンターを合わせる場面もあり、

さらにラウンド中盤にも序盤と同じような左ミドルキックが入り、

ラウンド終盤には左ストレートが顔面を捉え、

主導権を握ったのは金太郎選手でした。

 

会場で見ている時は、瀧澤選手は前回の石井戦より距離が詰まって見えたので

金太郎選手の距離で闘ってしまっているかな?と感じていましたが

ご本人に聞いたところそんなことはなかったそうで

セコンドの木暮選手からも「それ謙太の距離だよ」とゲキが飛んでいたので

距離設定は問題なかったそうです。

 

▪️2ラウンド

ラウンドインターバルで落ち着くことができたためか、

ここからは大振り気味には見えませんでした。

そして、サウスポーの金太郎選手に合わせて

右ミドルキックを起点に攻撃を組み立てていきます。

対する金太郎選手は1ラウンドで有効だった左ミドルキックは

2ラウンドの序盤で受け流されて感触が悪かったのか、

以降は左ボディフックを使うようになり、クレバーだなあと感心です。

瀧澤選手は1ラウンドも少し見せていた、

距離を詰めながら右の膝→右フックというコンビネーションを多用します。

これはおそらく練習してきたものでしょう。

TSUNE戦のKOがこのコンビネーションですが、

今回は膝でも大きなダメージを与えるような攻撃になっていました。

 

しかし、ラウンド終盤に金太郎選手の左ストレートがビッグヒット

瀧澤選手の顔がのけぞります。

ご本人や木暮選手にお聞きしたところ、衝撃を後ろに逃したため

ダメージはなかったそうですが見た目は悪いです。

 

瀧澤選手には3ラウンドでの明確な逆転が必要になりました。

 

▪️3ラウンド

左右のフックを振り回して瀧澤選手が前に出る展開。

金太郎選手はタックルを仕掛けますが瀧澤選手が切ります。

そしてクロスの左フックが金太郎選手の顔面にクリーンヒット!

よろける金太郎選手にさらに左右のフックでたたみかけ、

左が2回入ったところで金太郎選手はダウン!

しかしフラッシュ気味のダウンですぐにダブルレッグのタックルに行き、

一度は踏ん張るもリフトされて倒されます。

ここで瀧澤選手は下からニンジャチョークを仕掛けますが

脚がクローズ出来ていなかったため、ハーフガードにされて外れます。

しかし瀧澤選手は立ち上がりコーナーへ。

その後は押し込まれてロープ際の攻防が続き、ブレイクも無しで試合が終了しました。

 

会場での印象は、瀧澤選手はダウンは取ったものの

有効打の数が金太郎選手は上回っており、

3ラウンドのテイクダウンの分、金太郎選手の勝ちかな?と思っていました。

 

しかし判定は2対1の僅差ながら瀧澤選手の勝利!

勝ちと負けでは雲泥の差なので一安心でした。

 

 

・勝利のポイント〜ジャッジの基準〜

試合を見た直後は金太郎選手の勝ちと見ましたが、

後から考えてみるとそれは自分の中で

ユニファイドルール(北米MMAでのルール)が染み付いているなと感じました。

 

結論から言えば、3ラウンドのダウンが大きかったです。

あそこで明確にダウンをとっていたからこそ、瀧澤選手の勝ちになりました。

 

ここで、ユニファイドルールとRIZINルールのジャッジの違いを紹介します。

ユニファイドルールは1ラウンドずつの10点法で、

ほぼラウンドマストで基本的にどちらかに優劣をつけます。

そして3ラウンド制なら30点満点の点数で勝者を決めます。

しかしRIZINの判定はトータルジャッジです。

3ラウンド通して良かった方を勝者とします。

 

ラウンド毎のジャッジでは、どのラウンドの攻撃が良かったのかが明確な反面、

MMAはタイトルマッチ以外は3ラウンドと短いので、以下のようなことが起こります。

1R:僅差だけどA選手10−9

2R:僅差だけどA選手10−9

3R:明確にB選手10−9

この場合、B選手は3ラウンドで明確に差をつけたにも関わらず、

MMAではめったに10−10も10−8も出ないため

29−28で敗北となってしまいます。

しかしRIZINだと差をつけたB選手の勝ちでしょう。

 

ではRIZINでのトータルジャッジは万能かというとそうではなく、

判定基準が見えにくいという側面があります。

 

ここで、RIZINのジャッジ基準を見てみましょう。

セコンドの木暮選手のツイートを引用させていただきます。

RIZINではまずKOや一本に近い攻撃があったのはどちらか?を評価するということです。

そこの攻撃が両者とも互角の(あるいは両者ともなかった)場合は

手数やテイクダウンを含めたアグレッシブさで評価していく、という構図です。

つまり手数が多かろうとKOや一本に繋がる攻撃がなければ、

一回のダウンをとった方が勝ちになるのです。

 

ユニファイドルールでは効果的な打撃とあるだけなので、

1回のダウンよりも有効打を重ねた方が優勢になりやすいです。

そこもユニファイドルールとRIZINルールでの判定基準の違いの一つではないでしょうか?

 

今回、KOや一本に近い攻撃は瀧澤選手の3ラウンドにありましたので

判定は瀧澤選手に軍配が上がったというわけです。

しかも今回の試合では、

「どちらかというと有効打の数は金太郎選手の方が多め」

という程度の違いでした。

 

では、それならなぜ金太郎選手に1票入ったのか?

これについては木暮選手はボディへの攻撃を取ったのではないか?

と指摘しています。

ただし、ボディへの攻撃も「KOや一本に繋がる攻撃」

であったかというと、それには疑問符なので

ジャッジ陣にもRIZINの判断基準の統一が出来ていないように感じます。

 

今回の大会では、この試合の他にも判定2対1(スプリット)が頻発しました。

大原vs.矢地、久米vs.北岡、武田vs.川名

とどれも接戦でした。

 

RIZINの判定基準を振り返ってみてから、改めて考えてみても

上記の3カードの判定がスプリットになるのは致し方ありません。

大原vs.矢地戦はどちらもKOに繋がる攻撃があり、

久米vs.北岡戦は北岡選手の寝技が一本に近いものと判断するかどうか難しく、

武田vs.川名戦は両者ダウンこそ無かったが有効打は両者多かったです。

 

しかし瀧澤vs.金太郎戦はジャッジの判断基準がバラけたことによるスプリット

と言えるので、これは次回大会までに統一をしっかりして欲しいです。

 

 

・ロープの外に出てしまうのは誰が悪いのか?

3ラウンドの後半はロープ際で組みの攻防で時間を消費しました。

この時、金太郎選手が組んで瀧澤選手を押していき、瀧澤選手が凌ぐ構図でしたが

外に押し出す方にベクトルが向いているので、瀧澤選手は不可抗力で

頭や腕がリングの外に出てしまうことが度々ありました。

レフェリーはその都度頭を中に自分で戻すよう指示があり、

瀧澤選手は忠実に従っていました。

 

しかし、ロープの外に身体の一部が出てしまう事象を、

瀧澤選手側(ディフェンス側)にだけ責任を押し付けるのはいかがなものでしょうか?

金太郎選手側(オフェンス側)から外へと押し出す力が働いているから

そうなってしまうわけで、極端な話、

リング中央に向かった投げをすれば相手が外に出ることはないわけです。

 

なのでRIZINルールではブレイク(スタンドで再開)と

ドントムーブ(グラウンド状態の選手を同じ体制のまま中央へ移動させる)が

あるわけですが、今回は立ちの状態で、しかも金太郎選手が半分バックを取っていました。

正対していれば当然ブレイクですが(北岡vs.久米戦ではよく見られました)、

ブレイクするには金太郎選手が不利と考えて続いていたのでしょう。

 

そのため瀧澤選手が一方的にルールを守るために

脱出や有利なポジションへの移行ができなかったわけです。

これ、ルールの欠陥です。

リング&ロープでやる以上、選手任せにしてはいけない部分です。

同じようなことがRENAvs.富松戦でもあり、

今後の改善が必要な箇所です。

 

個人的にはいくらどちらかに有利なポジションであろうが

組みの膠着が続くならブレイクだと思います。

そしてロープ外の身体が出てしまい、引っかかって出られない事象は、

明らかな逃避行為でない場合は押し込んだ側にも過失があるとして

ブレイクでいいと思います。

 

そして現地ではわかりませんでしたが、赤コーナーでの攻防だったため

金太郎選手のセコンドの北方選手が非常に頭が外に出ることを

レフェリー陣にこれみよがしに反則だとアピールしていました。

一度出た身体をなかなか戻さずにロープを利用するならアピールもわかりますが、

明らかに金太郎選手の押し込みで頭が出た瞬間にアピールしており、

不可抗力と分かっていながら反則のアピールをするのは

セコンドとしてはダーティーではないかな?と思いました。

試合中の興奮状態で言ってしまった面はあると思いますが、

しかし、自分がもしRIZINで試合をした時に少しでもロープ外に身体が出た時に

反則してたなとか、いろいろ言われてしまうと思います。

(私はそんなコメントわざわざ本人にしにいったりはしませんが)

 

 

スポーツマンシップが素晴らしい両者

今回の試合、瀧澤選手も金太郎選手もスポーツマンシップが素晴らしかったです。

試合前から瀧澤選手は金太郎選手となら盛り上がる試合が出来て嬉しいと語っており、

自分がKOで倒すとしながらも、いい試合をしましょうと話していました。

 

一方の金太郎選手も自身のYouTubeチャンネルで

「1番いい試合が出来るのではないか?」

と話していました。

 

そして試合当日。

先に入場してリングインしたのは瀧澤選手。

金太郎選手も入場してリングインしてリングを一周した時、

なんと瀧澤選手とグローブタッチしました。

試合開始直後のグローブタッチはよく見ますが

入場の段階でタッチしているのは見たことがありません。

 

金太郎選手も瀧澤選手との対戦を楽しみにしていたのではないでしょうか?

冒頭で書きましたが、1年前に対戦の機運が高まっていた両者。

その際はベルトがかかるならやろうよくらいの回答でしたが、

瀧澤選手との試合を待ちわびていたのだと感じます。

 

あと、対戦はなかったもののパンクラスを盛り上げてきた“戦友”という

認識も両者にはあったのではないでしょうか?

パンクラスの力を2人で見せてやろうというのも感じました。

 

そして試合後、両者のSNSでツーショットがアップされました。

2人で腕をクロスさせているツーショット。

これはパンクラスロゴマークを表しているのだと思います。

なかなかこの写真は撮れないです。

それだけいい試合だったということの現れです。

 

金太郎選手は一切言い訳しませんでした。

勝ったと思っていたとも一切言いませんし、

ラッシュガードを着たことにも触れませんでしたし、

直前での試合決定にも何も言いませんでした(これは瀧澤選手も同様)。

ただ、瀧澤選手が強かったと、それだけでした。

 

本当に清々しいお二人で、いい試合でした。

 

 

・瀧澤選手のこれから

今後に向けて瀧澤選手にも課題はあると思います。

おこがましいですが、2点だけ書かせていただきます。

(プロから見たら他にもいろいろあるのだと思いますが)

 

まずはストレート系のパンチへの対応です。

金太郎選手の左ストレートを被弾するシーンが何度かありました。

RIZINでの最大の目標であるベルトは朝倉海選手が持っています。

朝倉選手は昇侍戦で突きのような素早い右ストレートを放っていました。

そのパンチで昇侍選手が踏み込めなくなり、KO勝ちに繋がるパンチを当てました。

朝倉選手との対戦にたどり着いた時にはもらってはいけないパンチです。

 

そして逆に瀧澤選手にもストレート系のパンチでの組み立てパターンも欲しいです。

バンタム級ではトップクラスのリーチを持っており、

リーチを活かすパンチは大きな武器になります。

倒すパンチは得意のフックでいいと思いますが、

組み立てにワンツーなどを持っておくと幅が広がりそうです。

 

今まではその役目が前蹴りだったと思います。

もちろん前蹴りが今後は使えないとは思いませんが、

蹴り足を掴まれるリスクもあるので多用はなかなか出来ません。

 

素人の勝手な意見で間違いかもしれませんが、いかがでしょうか?

 

 

・最後に

金太郎選手がタフだったため、宣言していたKO決着ではありませんでしたが

スリリングな攻防はシビレました。

応援関係なく、非常にいい試合だったと思います。

 

次戦は大晦日が濃厚とのことです。

また強豪相手となると思いますが、今回も6:4くらいで金太郎選手勝利と予想されていた中、

それを跳ね返して勝利を収めています。

 

そんな下馬評を覆す勝利が見られることが、今から楽しみです。